ハミングバードプロジェクトのモデルは?映画では分からないケーブル敷設の理由!












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映画『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』が公開されています。映画のモデル、ケーブル敷設の理由、どこまで実話?などをリサーチしました。

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1600キロの直線ケーブルで、0.001秒を短縮

タイトル:『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』
製作:2018年、カナダ、ベルギー合作
監督:キム・グエン(45歳、男性)※ベトナム系カナダ人
出演:ジェシー・アイゼンバーク(35歳、ユダヤ系米国人)=ヴィンセント・ザレスキ役、アレクサンダー・スカルスガルド(43歳、スウェーデン人)=アントン・ザレスキ役、サルマ・ハエック(53歳、女性、メキシコ出身米国人)=エヴァ・トレス役
言語:英語
公開:カナダ(2019年3月22日)、日本(2019年9月27日)
興行収入:世界58万5275ドル(2019年10月現在、1ドル107円で6262万4425円、米ボックス・オフィス社調べ)

9月27日(金)から日本全国で、カナダ、ベルギー合作の映画『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』が公開されています。

まずは、映画のあらすじをご紹介します。

ロシアからのユダヤ人亡命者らの息子である野心家ヴィンセントと“いとこ”の天才アントンは、ニューヨーク市で株の高頻度取引を行う会社で働いていた。

0.001秒単位の差が決定的な株の高頻度取引の世界で、2人は、より速い通信システムの構築を研究している。

表向きは真面目に働いている2人だが、裏では、データセンターのあるカンザスシティーから、ニュージャージー州にあるニューヨーク証券取引所のサーバーまで、直線1600キロの光ファイバーケーブル敷設を計画していた。

2011年、ヴィンセントは投資家スコーピオンから資金を得て、ついに敷設計画〈ハミングバード・プロジェクト〉を開始した。

ハミングバードとはハチドリの英語名。米国南部から南米北部にかけて生息し、空中に静止し、花の蜜を餌(えさ)にしています。

そのハチドリの1回の羽ばたきが1000分の1秒、0.001秒。〈ハミングバード・プロジェクト〉とは直線ケーブルで、ハチドリの羽ばたき1回分を短縮する計画です。

カンザスシティー・ニュージャージー間の1600キロの地権者約1万人と契約し、地下3メートルに直径4センチの光ファイバーケーブルを真っ直ぐに通す。

2人は会社を辞めて、掘削・敷設工事専門のコンサルタント、マーク・ヴェガと手を組み、205社の掘削、敷設業者を手配した。

一方、2人の働いていた会社の経営者エヴァ・トレスは不審に思い、2人の調査を進めていた。

〈ハミングバード・プロジェクト〉の存在を察知したトレスは、アントンが自社の技術コードを盗み、国家の安全保障を脅かしていると、FBIに訴えた。

アントンに直接、警告しに訪れたトレス。

同じ頃、体の不調に苦しんでいたヴィンセントは、重篤な胃癌と診断された。余命は1~2年。

しかし、ヴィンセントは治療を拒否し、取り憑かれたみたいに工事の進捗に邁進(まいしん)するのだった。

ケーブル敷設工事は、最大の難所、アパラチア山脈に差し掛かっていた。国立公園なので、建設道路は造れない。イカダやヘリコプターで機材を運び、硬い岩盤に穴を開けてゆく。

ついに、2人の用意した資金は尽きた。新たな出資を投資家スコーピオンに求めるヴィンセント。

それらを知らずにアルゴリズムの研究に没頭していたアントンは、ついにカンザスシティーとニュージャージー州間の通信時間を1ミリ秒(0.001秒)縮めて、0.016秒にする方法を見つけた。

大喜びするアントン。だが直後、アントンはFBIに逮捕されてしまった――。

こんな感じのお話です。ここから先は、ネタバレになるので書きません。

まあ、おおよそ、こんな映画なのだと分かっていただけたらと思います。

『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』は難解

さて、私は『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』を月初めの10月1日に、ハッピーファースト割引1100円で観賞しました。通常なら1800円です。

まあ、それはいいのですが、映画を見終わっても、内容がサッパリ分かりませんでした。

映画の字幕翻訳が悪いのか、はたまた、映画製作自体が悪いのか。

どちらかは、はっきりしませんが、1つ言えるとしたら、米国の証券取引について、かなりの予備知識を持っていないと、この映画は全然、楽しめません。

アメリカの、ウォール街の住人なら自明の事柄が、日本人の経済オンチの私には、サッパリ分かりません。

私みたいな人は、多いだろうと思います。それどころか、大多数の人が、私と同様、ちんぷんかんぷんな映画だと思います。

なので、皆様に代わって、この実話を基にした映画『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』のモデル、直線ケーブル敷設の理由などを調べてみました。

映画では決して分からない『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』の謎を解説してゆきますね。

映画のモデルはダン・スパイヴィ、バフェットら

まず、最初に映画の主人公ヴィンセントのモデルは、ダン(ダニエル)・スパイヴィ(Dan Spivey、45歳)です。

同姓同名の元プロレスラー(66歳)がいますが、別人です(笑)。

スパイヴィは2010年6月、米国の投資家ウォーレン・バフェット(89歳)から3億ドル(1ドル107円で321億円)の資金を得て、米シカゴからニュージャージー州カーテレット(Carteret)まで827マイル(1331キロ)の光ファイバーケーブルを真っすぐに敷設しました。

スパイヴィの起こした会社〈スプレッドネットワークス〉は、ネットスケープ社の元CEO、ジム・バークスデール(James Love Barksdale、76歳)の支援を受け、インターネット関連企業として、現在も稼働中です。

映画と違って、現実のハミングバード・プロジェクトは成功したのですね。

また、必然的にアントンのモデルはバークスデール、投資家スコーピオンのモデルはバフェットとなります。

ケーブルが完成したとき、バフェットは79歳でした。

すごいですよね。並のお年寄りなら、引退して、死に支度をしている頃です。

そんな時期に、大もうけの算段をしていたなんて、驚きです。

 

コンピューターの中に存在する株式市場

次に、光ファイバーケーブルを敷設した理由などを解説します。

証券取引所というと、テレビニュースではよく、腕まくりしたシャツの太った男たちが、大声を上げながら、立会場を右往左往している姿が映し出されます。

でも、あれは過去の映像です。

2008年9月15日(月)に起こった金融危機、リーマン・ショック。

あのとき、多くの顧客が所有する株式を売却しようとしましたが、証券会社の営業に電話がつながりませんでした。

運良くつながったとしても、1人の営業マンがさばける上限を超えていたので、大多数の顧客は全く身動きが取れませんでした。

この教訓から、株式市場のコンピューター化が進みました。現在では、株式の購入にしても、売却にしても、顧客はコンピューターを使って申し込みをします。

ニューヨーク証券取引所は、建物はニューヨーク市マンハッタン区ウォール街11番地にあっても、実際の機能は、ニュージャージー州カーテレットに設置されたコンピューターサーバーの箱の中です。

ここまで、お分かりになりましたか。

現代の株式市場は、コンピューターの中に存在しており、取引にリアルの人間の手が触れることは一切ない――このことが分かっていないと、映画の内容が、ちんぷんかんぷんになってしまいます。

NY・シカゴ間のケーブルは鉄道沿いに敷設されていた

アメリカには、2つの巨大な証券取引のセンターがあります。

ニューヨーク証券取引所(NYSE)と、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)です。

ニューヨーク証券取引所は現物取引、シカゴ・マーカンタイル取引所は先物取引のセンターです。

すでに書いた通り、ニューヨーク証券取引所の実質機能「データセンター」は、ニューヨーク州のお隣、ニュージャージー州カーテレットのサーバーにあります。

ニュージャージー州と聞いてもピンと来ない人は、アメリカの埼玉県だと、お考えください。埼玉県と東京都は、目と鼻の距離ですよね.通勤、通学する人も多いです。

シカゴ・マーカンタイル取引所は、建物自体は、イリノイ州シカゴの繁華街〈サウスサイド〉のシカゴ市セルマック・ロード350番地東のビルにあります。

サーバー(データセンター)はかつては、同じビル内にありましたが、現在では、シカゴの西隣、イリノイ州オーロラ市にあります。シカゴが東京なら、オーロラは横浜といった感じです。

映画では、シカゴ・マーカンタイル取引所のデータセンターは、カンザス州カンザスシティーに設定されていました。

変更の理由は分かりませんが、安全保障上の配慮があったかもしれません。

取り敢えず、この場では現実に即して、シカゴ・カーテレット間で話を進めたいと思います。

シカゴ・マーカンタイル取引所からカーテレットまでの直線距離は、Googleマップでは1141.74キロ(709.45マイル)です。

理論上、シカゴ・カーテレット間を光ファイバーのケーブル回線で結ぶと、通信に0.012秒(12ミリ秒)かかるはずです。

ところが、実際の通信にかかる時間と理論上の時間に大きな違いがあることに、スパイヴィは2008年頃、気付きました。

通信会社によっても違いますが、14.65ミリ秒~17ミリ秒もの差が出ました。

不思議に思ったスパイヴィは、理由を調査しました。その結果、驚くべき事実を発見しました。

通信会社のケーブルは、鉄道の線路に沿って、敷設されていたのです。とりわけ、ニューヨーク州の西隣、ペンシルベニア州に入ると、大小のカーブを繰り返します。

また、ペンシルベニア州の中で、アパラチア山脈の一部であるアレゲーニー山脈と、その台地を避けるために、鉄道は大きく迂回(うかい)しているのでした。

スパイヴィは、シカゴ・カーテレット間に真っ直ぐに光ファイバーケーブルを敷設すると、距離が160キロ以上も短縮できると、気付きました。

時間にして1ミリ秒(0.001秒)以上です。

人間のまばたきにかかる時間は0.1秒(100ミリ秒)です。これの10分の1の時間です。

と書いてもピンと来ない人は、カメラのシャッター速度を考えてください。

シャッター速度1000分の1秒の、シャッター幕の落ちる時間――あれが1ミリ秒です。ほんの一瞬ではありますが、確かに存在する時間だって実感できますよね。

NY市場の先回りで、シカゴ市場で先物買い

では、ニューヨーク証券取引所とシカゴ・マーカンタイル取引所の通信時間が短縮されると、どのような“よい出来事”が起こるのでしょうか。

例えば、ニューヨーク証券取引所で、A社の株が1000株、買い注文が入ったとします。

その瞬間、買い注文を察知した顧客B社のコンピューターが、シカゴ・マーカンタイル取引所の先物取引に、1000株の買い注文を入れます。

シカゴ・マーカンタイル取引所のコンピューターは、いちばん早く買い注文を入れたB社と売主の取引を成立させました。

と同時に、B社のコンピューターはA社株の買い注文1000株に対して、手に入れたばかりの1000株を、誰よりもいち早く売ります。

たったこれだけの取引で、B社は1株につき1セント、総額1000セント(10ドル≒1070円)の差額を手に入れました。

これを1日に何回も、何万回も、しかも毎日続けたら、総額はたいへんな額になります。

まさに打ち出の小槌、金の卵を産む鶏(しかも不死身)です。

現代の株式市場では、人間の手が関与する場面は、全くないのでしたね。

代わりに、オートマチック化されたコンピューターが、1秒間に何回もの取引を繰り返しています。

こういった取引を、高頻度取引(ハイ・フリークエンシー・トレーディング、high-frequency trading、HFT)と呼びます。

ヴィンセントとアントンは、高頻度取引の会社に勤めていたのでしたね。

映画では、まさに0.001秒を短縮するために、ヴィンセントアントン、トレスたちは、鎬(しのぎ)を削るのでした。

まさに、時は金なり。

こういった背景は、映画を見るだけでは、なかなか分かりません。

この記事を読んでから、もう一度、映画を見るか。

映画を見る前に、この記事を読むか。

それは見る人の自由ですが、映画だけでは分からない背景が分かっていただければ、と思います。

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